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アンカーボルトとホールダウン金物を田植え式で施工について


<徳島県鳴門市・匿名さん(会社員・33歳・男)>


 現在、基礎の立ち上がり部分の工事をしているんですが、写真のようにアンカーボルトとホールダウン金物が、ちょっと見ただけでもわかるくらいに色んな方向を向いていました。ハウスメーカーに問いただしたところ、両金物とも田植え式で施工したとのこと。アンカーボルトもそうですが、特にホールダウン金物を田植え式で施工するのは欠陥工事ではないでしょうか? 先生方の判断よろしくお願いいたします。
添付画像



アドバイスいたします
住まいを科学する技術集団・新住協常任理事
兼 北海道Webサイト事務局 兼 札幌支部事務局
勇和建設株式会社
代表取締役 齋藤 保雄

新住協北海道:http://www.shinjukyo-h.jp/
勇和建設HP:http://www.yuuwakk.co.jp/
ブログ:http://blog.livedoor.jp/replanblog012/

 木質系住宅建築現場のアンカーボルトの施工法には、確かに、「田植え式」と「事前固定式」が存在します。「田植え式」は、生コンを流し込んでから、固まり始める前にアンカーボルトを埋め込んでいく方法。「事前固定式」は、生コンを流し込む前に、型枠や専用固定部材、鉄筋などに固定しておく方法です。
 「田植え式」の場合、工事費が安く上がるメリットがありますが、アンカーボルトを設置する時間が限られるので、設置工事が粗雑になりやすく、位置を間違ったり、入れ忘れたりする危険性もあります。「事前固定式」の場合、工事費は少しかかりますが、あらかじめ本数や設置位置などを確認できるので、品質管理の上では、高精度な仕事といえます。住宅金融支援機構の木造工事共通仕様書では、事前固定式の施工を推奨しております。
 前述のような差がありますが、「田植え式」だからといって欠陥工事だというものでもありません。所定の位置にアンカーボルトを田植え施工した後に、空隙ができないように処置をしてあれば、少々曲がっていても、強度には問題ありません。写真を見る限り、アンカーボルトの向きが不揃いで、高精度な仕事とはいえませんが、この程度であれば、まっすぐになるように補正をすれば良いでしょう。
 しかし、アンカーボルト(ホールダウンを含む)が所定の位置に設置されているかどうかの説明は、求めましょう。「ホールダウンアンカーボルトの埋込深さが、規定値以上確保されているか」という点と「アンカーボルトのフック部分で、コンクリートのかぶり厚さが確保できているのだろうか」という点も危惧されます。
 太さ16mmのホールダウンアンカーボルトは、通常品であれば、360mm以上の埋込深さが必要です(特殊なホールダウンアンカーボルトで、必要埋込深さ200mmのタイプもあります)。通常のホールダウンアンカーボルトの埋込側先端は、U字型に折り曲げたフック形式になっているのですが、コンクリートのかぶり厚さは30mm以上必要なので、埋込みの向きを誤ると、フックの部分でかぶり厚さが確保できていない可能性があります。埋込深さについては、使用したホールダウンアンカーボルトの長さを出荷証明などで確認し、コンクリートから出ている寸法を差し引けば確認できます。360mmより著しく不足している場合には、問題がありますので、手直しを要求すべきです。
 かぶり厚さについては、残念ながら簡単には確認できませんので、どのような施工をしたのかの説明を求めましょう(鉄筋探査機を使って確認できるかもしれませんが、アンカーボルトのフックを探査するのは、難しそうに思います)。

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