住宅クレーム110番
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新築直後は寒い?いつかは暖かくなる?」への私の意見


山本技術士事務所
所長 山本廣資


「春先でも冬でもないので、暖房(パネルヒーター)などの使用はもちろん頭にはありません」とありますが、寒冷地の札幌で今までどのような生活をなさっておられたのでしょうか。「理屈では、当たり前ですよね」と言うのは、どういう理屈なのでしょうか。私の知る限り、夏でも暖房器具が仕舞えないのが札幌の生活と聞いています。温熱環境の快適性のために暖房設備があるのですから、寒い・涼しい日があれば状況に応じて暖房器具を使うのが「当たり前」と考えます。
 高断熱で、なおかつ隙間風や外気の導入がゼロ、または少なければ、回答のように外気温が低くても、室温が外気温と同じ程度になることは考えられません。
 寒くなる原因は、第3種換気設備の換気量にあると思います。寒冷地の24時間換気システムは、全熱交換器を組み込んだ第1種換気が一般的です。この場合は排気と給気が熱交換されますから、入ってくる冷たい外気も生の状態ではなく、室温に近くなるので、寒さは和らげられます。暖房時の快適性も上がりますし、省エネになります。
 第3種換気設備の場合は、自然給気口から入ってくる外気は全熱交換器等を通過していないそのままの状態ですから、外気が冷たい場合は、外気による冷房を行っていることになります。この場合は換気量が多ければ、室温は確実に下がります。寝ているときの発熱は人体からだけです。断熱された外壁や2重サッシの窓から外に逃げる熱がゼロとしても、外気温度が下がれば、暖房なしでは寒く感じるのは当然です(内地でも店舗ビルのように冷房期間が長い建物では、夏以外は室温より冷たい外気の取り入れ量を増やして外気冷房を行い、冷房用熱源機の運転を節約しています)。
 S.Aさんの旧居はどうであったのでしょうか。北海道の住宅ですから、気密性・断熱性はそれなりにあったはずです。また、換気設備は必要なときしか運転されていなかったでしょう。したがって、外が寒くても室内はそれほど寒くなかったと思います。「何ともふに落ちない感じ」は、そこのところの感じではないでしょうか。
 換気扇類を24時間使っていないときの旧居のサッシや換気口からの隙間風の量より、現在の24時間換気量のほうが多ければ、新居のほうが寒く感じるのは当然です。ずっと昔の気密性の低い住宅と同じような状態になります。
 換気量が多すぎないか調べてもらい、さしさわりのない範囲で換気風量を絞ってもらってはいかがでしょうか。家族の中に化学物質過敏症の方がいなければ、夜間はタイマー運転にして止めるのも一案です。
 もうひとつの原因は、吹き抜けのせいではないでしょうか。給気口の位置が不明ですが、換気量が多ければ、長時間の間に吹き抜け上部は暖かい空気、家族の生活する下の空間は外気と同じ冷たい温度という現象になることは考えられます。
 いずれにしても、暖房機の運転は不可欠です。


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