住宅クレーム110番

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J110 News

冬寒くて、夏暑い


<愛知県江南市・Aさん(主 婦・33歳・女)>


 平成17年に、前面南向きの建売住宅を購入しました。冬は、暖房なしだと外気温と室内温度の差が4〜5℃くらいしかありません。朝起きて外が5℃のとき、室内は10℃くらいです。断熱材はグラスウールで、一枚ガラスだと仕方がないのでしょうか? すごく寒いのでこの家は大丈夫かな?と、心配になっています。夏も冬と同様に外気温に左右されます。業者は、マンションから一戸建てに移った人は特に寒く感じることがあると言い、問題は無いと言います。本当にこの状況は問題ないといえるのでしょうか? 教えてください。



アドバイスいたします
住まいを科学する技術集団・新住協常任理事
兼 北海道Webサイト事務局 兼 札幌支部事務局
勇和建設株式会社
代表取締役 齋藤 保雄

新住協北海道:http://www.shinjukyo-h.jp/
勇和建設HP:http://www.yuuwakk.co.jp/
ブログ:http://blog.livedoor.jp/replanblog012/

 愛知県江南市は、住宅断熱工事における地域区分では、IV地域です。お住まいの住宅のサッシ以外の断熱・気密仕様がわかりませんが、住宅金融支援機構の木造工事共通仕様書程度と推測すると、床・壁・天井ともに、密度10kg/m3のグラスウール50mm程度と思われます。10cmの壁厚の中に5cmの断熱材ですから、まさにスカスカ状態(画像を参考)。

「既存住宅の隙間と気流」
「既存住宅の隙間と気流」
出展/新住協「新在来木造構法マニュアル2002」

太陽の日射熱が入っても無暖房なら、外気温より24時間平均で2℃程度しか、室内温度は上がりません。一晩で、外気温プラス4℃程度まで下がるのは当然の結果といえます。30坪程度の住宅と想定して、一日の平均室温を18℃に保つように全館暖房をしようとすると、ひと冬に1,800L(ポリタンク100個)以上の灯油が必要となる状態なのです(新住協の熱計算ソフト「QPEX」を使って、名古屋市の気象データから計算しました)。
 「この状況は問題ないといえるのでしょうか?」という質問ですが、欠陥や異常などではないのですが、省エネで快適に暮らそうとすれば、明らかに「問題あり」です。できることなら、次世代省エネ基準に適合するような断熱・気密改修をオススメします。この基準に適合する全館改修ができると、全館暖房を試みても灯油800L(ポリタンク45個)程度で済むでしょうし、夏ももっと涼しく過ごせると思います。この断熱仕様は、内窓を追加して二重窓とし、床・壁の断熱厚さは100mm程度、天井が200mm程度の仕様です。夏の暑さを考えれば、天井断熱は300mm以上あったほうが、より快適になります。
 床と壁の断熱改修はなかなか難しいのですが、窓の二重化と天井の断熱・気密強化は、比較的容易に施工できます。断熱リフォームに対する住宅エコポイント制度もできたことですし、断熱・気密施工をしっかり理解していて施工実績も数多い、優良な工務店に相談してみては、いかがでしょうか。
 住宅版エコポイント制度については、下記Webサイトをご参照ください。

http://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/jutakukentiku_house_tk4_000017.html



J110 News

床鳴りの原因


<京都市・Eさん(会社員・33歳・男)>


 初めて投稿させてもらいます。わが家は新築木造で、入居後半年で床の一部が床鳴りし出しました。すぐに施工会社に連絡して補修工事をしてもらいましたが、一向に直らず、2度3度と工事を行いました。しかし、それでも直らず、床鳴りの箇所が増えただけになってしまいました(今では計5ヵ所)。今までの補修工事の内容は、根太の補強やボンドの使用、束を増やすなどの工事です。近々4度目の工事を行うのですが、今度はフローリングの上から穴をあけての補修工事の予定です(施工会社が言うには、これだけ下からの工事をしても治まらないため、上からしか方法はないとのこと)。今まで3度も工事をしたのに一向に改善されておらず、むしろひどくなっているこの状態で、今度は上からの工事をしてさらにひどい状態にならないかと心配しています。
 質問なのですが、施工会社は床鳴りの原因は工事をしてみなければわからないと言っていましたが、原因を特定するのは不可能なのでしょうか?  はっきりとした原因がわからなければ、また同じことの繰り返しになるのではないでしょうか。そして、もう1つ質問なのですが、補修工事を行ったために鳴り出した箇所については保証期間は延長されるのでしょうか(契約書には、保証期間は2年と記載。現在入居3年目)。もうすでに保証期間は過ぎていますが、次の工事までは無償で行うようです。こちらとしては、工事後、鳴り出した箇所については保証して当然だと思っているのですが、施工会社が納得するとは思えません(工事が原因で鳴り出したものか、証拠が無いなどと言ってきそうで)。そう言われた時に保証させる方法があれば教えてください。わかりにくい文章で申しわけありませんが、よろしくお願いいたします。
 追伸、施工会社が言うには、リビング一面にガス式床暖房が施工してありるために直しにくいのだそうです。



アドバイスいたします
住まいを科学する技術集団・新住協常任理事
兼 北海道Webサイト事務局 兼 札幌支部事務局
勇和建設株式会社
代表取締役 齋藤 保雄

新住協北海道:http://www.shinjukyo-h.jp/
勇和建設HP:http://www.yuuwakk.co.jp/
ブログ:http://blog.livedoor.jp/replanblog012/

 今回の相談のキーワードは、以下の3点ですね。
「床鳴り(原因と処置)」「保証の延長」「ガス式床暖房」

<床鳴りの原因>

 木造住宅の床の構造(イラストを参考)は、一般的に(束を支える)独立基礎・木束・大引(太い水平材)・根太(大引きと直行方向の細い水平材)・床下地合板・床仕上げ材の6層構造になっています。上下方向に6層構造ですから、継ぎ目が5ヵ所あるということです。一方、水平方向には、30〜45cm間隔の根太・90〜100cm間隔の大引き・束も要所要所にあります。要は、床鳴りする可能性のある場所がたくさんあるということなのです。

木造住宅の床の構造

 さらに、床鳴りの直接原因は多様で、木材同士がこすれて鳴る、木材を留める釘で鳴る、合板の継ぎ目が鳴る、などがあります。「住み始めて半年過ぎてから鳴り始めた」ということから推測すると、木材の乾燥進行に伴い、木材がやせたり、そったり、ねじれたりなどの木材の変形が出始めたことが、誘因ではないでしょうか。
 もし人工乾燥木材を使用していたとしても、その含水率は18%程度です(構造用集成材で15%)。住宅内部に納まった木材は、その後さらに1年前後の時間をかけて乾燥が進み、おおよそ10%程度まで乾燥が進行した頃に、安定するそうです(このときの含水率を平衡含水率といいます)。この過程で、木材が変形するようです。さらに「床暖房」が動作し始めると、木材に接している床暖房パネルが30℃以上になるので、木材の乾燥変形を促進した可能性も高いと思います。
 要するに、床組は床鳴りする可能性を多数内蔵しているので、住宅施工会社には乾燥材や集成材の使用、釘やビスの丁寧な施工など、床鳴り対策をしっかりやることと、一定期間の保証をすることが求められているのです。
 前置きが長くなりましたが、床鳴りは、原因・発生箇所が共に多様で、特定するのは難しいのですが、その多くは木材の乾燥進行に伴う変形が原因である場合が多いようです。

<床鳴りの処置>

 床鳴りを床の裏側から直すのは、なかなか難しいものです。上からかかる加重に対して、接着剤を併用しながら下からビスなどで締め付けても、なかなか緊結するのが難しいからです。床鳴りに対しては、「床上から直す」のが最も効果的です。床仕上げ材に深さ数mmの下穴をあけて、大引きまで届く長いビスで床板を直接締め付ける方法です。ビスの頭部分は、樹脂などを充填して、床材と同じように見えるように補修することができます。
 しかし、ここで問題になるのが、床暖房パネルの存在です。温水パイプが内蔵されているので、パイプのないところにビスを打たなくてはなりませんが、これがわかりにくいのです。可能ならば、床暖房パネルをいったん撤去してから直したいところです。床暖房パネルの上が置き敷き絨毯ならば一時撤去も可能ですが、床暖房パネルの上に木質床材などを張り付けている場合は、撤去が困難になります。徹底修理には、床仕上げ材をはがして張り替えるくらいの工事が必要と思われます。

<保証の延長>

 部分補修の場合、一般には保証の延長はしていないでしょう。今回、しっかり直してもらいましょう。


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