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TIT110.gif  TOKU
 
親子でも(だから)話せない『2世帯住宅のお金』研究

 
何件か2世帯住宅についての問い合わせをいただいています。
そこで今回は、『2世帯住宅のお金』という内容に絞ってリプラン編集部から
お送りいたします。


目 次
 
  1.はじめに
  2.土地と相続
  3.家の設計
  4.贈与特例
  5.融資の利用
  6.登記と税金

 
110IL79.gif  ひとつ屋根の下に親と子が暮らす2世帯住宅。大きなリビングに親・子・孫の3世代が集う光景は、微笑ましいものです。これから2世帯住宅を建てようとしている皆さんの頭の中にも、楽しい家族だんらんの光景があれこれ浮かんでいることでしょう。その夢を現実のものとするためには、さまざまな課題をクリアしなければなりません。中でもお金の問題は、親と子、両世帯の生活基盤にかかわることですから、納得するまで十分話し合っておく必要があるでしょう。そうは言ってもお金のことはなかなか話しにくいもの。たとえ親子でも、あるいは親子だからこそ、財布の中身までさらけ出すのははばかられることもあるようです。そこで今回は「親子だから言えない2世帯住宅の『お金』の話」です。



1.はじめに

110IL80.gif  お金の話に入る前に、2世帯住宅とはそもそもどういうものかということを考えてみましょう。2世帯住宅が増えてきたのは、子世帯にとっては地価が高くて自分達だけではマイホームを建てられない、親世帯にとっては社会福祉制度が未整備なので老後は子供が頼り、というようにそれぞれに事情があるようです。そのほかにも、生活費を分担できる、子供の面倒を見てもらえる、夫婦だけで外出できるなどの思惑をもって同居に踏み切ることもあります。
 一九六○年代の高度成長期までは、長男が結婚後も親と同居するのが当り前でした。その後、サラリーマン化や核家族化が進み、1住居に1世帯が住むようになります。地価の高騰で住居面積が狭くなったことやサラリーマンにつきものの転勤、希薄な人間関係が好まれるようになったことなどがその原因と言われます。今でも基本的な条件は変わっていません。核家族化の傾向は個人重視に進み、ひとり1部屋、テレビも電話もひとり1台、家に帰ってきた子供がまっすぐ自分の部屋に直行するという家庭も珍しくありません。もともと完全同居していた親世帯と子世帯が、建て替えのときには2世帯住宅にするという例などは、この傾向を示すものでしょう。
 つまり、地価の高騰という経済事情、福祉の貧困という社会事情、それに親世帯・子世帯の思惑といった同居を推し進める要因と、核家族化・個別化の傾向が絡み合って2世帯住宅が生まれたと考えられます。「近くに住みたいけど干渉はされたくない、自分の生活スタイルは変えたくない」という要望が多いのは、そのせいではないでしょうか。「つかずはなれず」とか「スープの冷めない距離」という言葉がその辺の事情を見事に表わしています。
 こうしたことは、一見、お金には関係のないことのようですが、2世帯住宅に限らず、建てる前に自分のこと、夫婦のこと、子供のこと、両親のこと、将来のことなどをしっかり考えておかないと、むだなお金を使うことになってしまいます。すべて共有の完全同居にするのか、玄関共有の公庫型2世帯にするのか、それとも完全分離の区分所有にするのか、という選択も、2つの家族の関係によって変わってくるでしょう。場合によっては、「本当に自分は両親と同居したいのか」と問い直してみることも必要かもしれません。その結果、2世帯住宅をあきらめるという選択もあります。
 もちろん、2世帯住宅には、想像以上にさまざまな魅力があります。それはおそらく、2世帯同居によって感じるとまどいやささいなトラブルを補って余りあるでしょう。2つの家族のあり方が住まいの形となって表われているような設計ができれば、まさにジャストフィットした2世帯住宅になるはずです。それを実現するために「お金」について話し合うことも、一緒に住まいづくりを楽しむという2世帯住宅の魅力のひとつかもしれません。

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2.土地と相続

110IL81.gif  一般的な例として、親が持っている土地に2世帯住宅を建て、息子夫婦と同居する場合を考えてみましょう。まず同居することを家族全員が納得しなければなりません。親・子・孫の全員です。次に兄弟姉妹です。ひとりっ子なら問題ありませんが、兄弟がいる場合は、その同意も必要です。将来親の身体が不自由になったとき、だれが面倒をみるのか、いつか親が亡くなったとき、相続をどうするか、といったことを兄弟姉妹とその配偶者を交えて話し合っておくことも必要でしょう。いったん2世帯住宅を建ててしまうと、何もかも同居世帯にお任せということになりがちですが、老人介護の経済的・体力的・精神的負担を考えると兄弟の協力は欠かせません。それが相続についての合意にもつながるでしょう。
 相続税については、結論から言うと、ごく普通のサラリーマン家庭ならほとんど心配する必要はありません。基礎控除として5千万円プラス相続人1人当り1千万円を相続財産から差し引くことができます。相続人が妻と子供2人なら合わせて8千万円が無条件で控除されるわけです。土地(路線価)と建物(固定資産税評価額)・現金預金・有価証券・生命保険などを合わせても、基礎控除額を超える財産をもっている人は少ないでしょう。生命保険金については1人500万円の控除がありますし、負債や未納の税金・葬式の費用なども控除できます。また、住宅がたっている土地については、200平方メートル以下について評価額を80%減額できます。
 相続についてはむしろ、兄弟のだれがいくら相続するかが重要でしょう。特に主な財産が土地と建物という場合、分割して相続することはできませんから、同居していた息子が土地や建物を相続し、ほかの相続人(兄弟)に相当額を金銭で支払うということになります。同居に際しては、兄弟のうちだれが同居するかということと相続のおおまかな方向について同意を得ておくほうがいいでしょう。同居後に状況が変わったときはそのつど相談すればいいのです。もしも同居していない相続人が相続を放棄するなら、亡くなる前に遺言書を書いておいてもらうのもいいかもしれません。こういうことは同居する子世帯からはなかなか言いにくいものです。親世帯が配慮してあげるか、同居しない子供が切り出すのがいいでしょう。

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110IL82.gif  2世帯住宅Plan 1.
 
 玄関を共有する上下で分離する
 準2世帯のくらしの家
 
 家族構成 大人3名
 延床面積 189.85m2(57.4坪)
 設計   アクラ建設設計事務所
 
 
 
110IL83.gif  2世帯住宅Plan 2.
 
 上下で完全分離の2世帯
 タテとヨコ、それぞれに
 開放的な生活空間
 
 家族構成 大人4名・小人1名
 延床面積 224.00m2(69.0坪)
 設計   北海道工房(株)



 
3.家の設計

110IL85.gif  さて、2世帯住宅を建てようと決めたら、次は設計プランです。
 「十人十色」というように、家族の姿も千差万別です。2世帯住宅では2つの家族の要望を満たさなければならないのですから、標準的なプランというのはありえません。2世帯住宅の数だけ解答があると言ってもいいでしょう。ですから、設計事務所に依頼するときはもちろん、住宅メーカーに頼むときも、設計はまったく白紙の状態から始まります。(それでも設計者の頭の中には、過去の事例やイメージなどの材料が詰まっているものですが)。
 2世帯住宅の設計を進めるに当たっては、さっそくお金の問題が出てきます。工事費にいくらかけられるのかという問題です。一般に親世帯は定年の60歳前後、子世帯は30代という年齢が多いようです。親世帯は、自己資金はある程度あるが、できればローンは組みたくない、子世帯は、自己資金が少なくローンを組まざるを得ないという状況が想定されます。全体の予算が3千万円だとすると、たとえば親世帯は1千万円を全額預金で賄い、子世帯は残り2千万円のうち400万円を自己資金、1600万円を借り入れるというようなことになります。こうした条件の下で完全同居の住宅や公庫型の二世帯住宅を設計する場合、共同で使用する部分を除いた面積を出資する比率で分割してそれぞれの生活スペースとすることが多いようです。これは完成した住宅を、その出資比率に応じた持ち分により共有登記とするからです。不動産取得税や固定資産税もこの持ち分に応じて課税されます。そのとき実際の使用面積が持ち分比率からあまりにかけ離れていては、公平とは言えないでしょう。たとえばこの住宅が坪50万円で、延べ60坪、そのうち15坪を共同で使用するとすると、残りの45坪を、親世帯15坪、子世帯30坪とするわけです。
 同じ条件で完全分離型の住宅の場合を考えてみましょう。完全分離型では、親世帯と子世帯のそれぞれが所有する部分が明確になります。この場合、登記は、親世帯と子世帯、共有部分の3つにわけ、それぞれの所有部分を区分登記し、共有部分は共有登記になります。共有部分が15坪とすると、その持ち分は5坪対10坪、占有部分は同じように親世帯15坪、子世帯30坪という割合で設計します。固定資産税などは、親世帯が占有部分15坪と共有部分の持ち分5坪の合わせて20坪、子世帯が占有部分30坪と共有部分の持ち分10坪の合わせて40坪について課税されることになります。これは共有登記の例でもまったく同じです。
 ただ、どちらにせよ実際の設計ではそれほど正確に分割しているわけではありません。両世帯が納得していればそれでいいわけで、設計時に配慮したいのは、出資比率と実際の使用面積の比率をほぼ同じにして、無用なトラブルを未然に防ぐということです。

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4.贈与特例

 前述の例で、子世帯の自己資金を400万円としましたが、30代でこれだけの自己資金をためるのはなかなか大変です。子供の教育費も蓄えていかなければなりませんし、旅行やレジャーも楽しみたい時期でしょう。そこでもし親世帯に余裕があるなら、住宅取得資金の贈与特例を利用しましょう。これは、親から子、祖父母から孫への住宅取得資金の贈与に限って認められるもので、住宅の床面積が240平方メートル以下、過去5年以内に住宅を所有していない、所得が1200万円以下(給与年収で1430万円以下)などの条件を満たせば、一人300万円まで贈与税がかかりません。たとえば、夫の親から夫に300万円、孫一人に300万円、妻の親から妻に300万円、2人目の孫に300万円の贈与を行い、合わせて1200万円の資金を無税で確保するということもできます。また、この特例では、300万円を超える部分でも贈与税が大幅に軽減され、たとえば1千万円の贈与を受けた場合、普通は283万円の贈与税がかかりますが、この特例では70万円に減額されます。ただし、子や孫の配偶者には適用されません。

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110IL87.gif  2世帯住宅Plan 3.
 
 2世帯共通のスペースで
 仲良く快適な暖かい関係
 
 家族構成 大人3名・小人3名

 延床面積 約215m2(65坪)
 設計   (株)アトリエアム



5.融資の利用

110IL91.gif  次に借入金について考えてみましょう。さきほどの例では、子世帯の借入金1600万円に当たる部分です。まず真っ先に考えられるのは住宅金融公庫です。現在の基準金利は年3.1%、床面積が125平方メートル超280平方メートル以下で3.15%です。民間の住宅ローンでこれよりも低い金利もありますが、変動金利型ですから将来上がる可能性があります。短い期間で返済できるならそれも結構ですが、20年、25年の長期返済なら固定金利の公庫融資が有利でしょう。基本融資額は、175平方メートル超280平方メートル以下の木造で1600万円、耐火・準耐火で1670万円です。これだけでもさきほどの例では十分ですが、さらに一定の要件を満たした2世帯住宅であれば、基本融資と同じ金利で450万円までの割増融資が利用できます。割増融資の要件とは、親子など直系親族の二世帯が住み、それぞれの世帯に同居予定の家族がいること、同居世帯主に定期的な収入があり、連帯債務者となること、4以上の居室・2以上のトイレ・2以上の台所・1以上の浴室があること、内部で行き来できることとなっています。これで合わせて2千万円以上の融資を受けることができますが、まだ不足であれば年金住宅融資や財形住宅資金もほぼ同じ金利で利用できます。ただし、自分たちの返済能力をチェックしなければなりません。

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6.登記と税金

 資金のめどもつき、設計が終わって工事金額が確定しても、まだまだお金の話は尽きません。工事が無事済んでマイホームが完成すると、保存登記の際に登録免許税がかかります。税率は240平方メートル以下の場合、法務局の認定価額の1000分の3。同じように抵当権の設定登記では、240平方メートル以下の住宅で債権金額の1000分の2の登録免許税が必要です。これはいずれも軽減税率です。
 その次には不動産取得税がかかります。200平方メートル以下の住宅の場合、固定資産課税台帳の登録価格から1千万円を控除し3%の税率で課税されます。このほか固定資産税や都市計画税などの税金がかかってきます。
 さて、さきほど親世帯は「できればローンは組みたくない」と言いました。ことお金に限って言えば、定年を過ぎた世帯にとって頼れるのは預金と年金だけです。その中から毎日の生活費を賄い、孫の入学・進学のお祝いをして、ご近所付き合いもしなければなりません。老後の楽しみとして夫婦で旅行をしたり、温泉めぐりもしたいでしょう。その上さらにいろいろな税金を支払わなければならないとすると、実際の金額以上に大変な負担に思えるものです。その一方で、多少の財産があれば、できるだけ子供に残してやりたいというのも親心でしょう。
110IL92.gif  そこで、さきほどの例の場合を考えてみると、住宅取得資金贈与の特例を利用すれば子供の数によっては親世帯の出資分1千万円の大半を無税で贈与できます。そうすると共有登記の持ち分は大半が子世帯となり、親世帯の各種税負担は大幅に軽減されるでしょう。実際の利用面積は持ち分比率と食い違ってきますが、実際には親世帯が出資したのと変わりありませんから、不満が生じる心配はありません。
 
 融資制度や税制はなかなか理解しにくい部分もありますが、特例や軽減措置はおおいに利用して無理のない資金計画を立てたいものです。特に親世帯は、子供や孫と同居できるというだけで満足して(もちろんそれは大事なことですが)、お金の話は二の次になりがちです。しかしお金のことが不安や心配の種になったのでは、せっかくの2世帯住宅も色あせてしまいます。
こうして「お金」を手がかりに二世帯住宅を眺めてみると、お金は失敗しないための手段でしかないということがわかります。お金は大事ですが、それよりも「何のために2世帯住宅を建てるのか」という目的の方がより重要です。「一緒に幸せに暮らしたい」という気持ちを大切にして話し合えば、必ず満足できる解答を見つけられるはずです。

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